「辞めたいけど、貯金がいくらあれば大丈夫なのか分からない」。この不安で退職を先延ばしにしている人はとても多いはずです。検索すると「生活費の3か月分」という目安が並びますが、これは収入が止まる一方で支出が増えるという退職後の構造を織り込んでいません。

退職すると、いままで給与から自動的に引かれていた社会保険料が自分で払うものに変わり、会社が半分負担していた分もなくなります。住民税は前年の所得に対する後払いなので、無収入でも請求が続きます。そして失業保険は、辞めた翌月に振り込まれるわけではありません。この3点を足し合わせて、月ごとに並べる。それがこの記事のやり方です。

先に結論

必要な貯金は「生活費×3か月」ではなく、「(生活費+社会保険料+住民税の月割り)×空白が埋まるまでの月数 − その間に受け取る失業手当 + 予備費」で求めます。2025年4月1日以降の離職なら自己都合の給付制限は原則1か月に短縮されましたが、離職票の到着・待期7日・認定日を挟むため、初回入金までは離職から約2か月というのが2026年9月時点の一般的な流れです。

目安としては、単身で家賃を払っているなら90〜100万円、実家暮らしなら40〜50万円、扶養家族がいるなら130〜150万円。会社都合・特定理由離職者にあたる場合は給付制限がないぶん、必要額は1か月分ほど軽くなります。

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空白期間の長さは退職日と有給の残日数で決まります。カレンダーに置くと、必要額の月数が確定します。

「生活費×3か月」では足りない理由

在職中の給与明細を見ると、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・所得税・住民税がまとめて引かれています。手取りしか意識していないと気づきにくいのですが、健康保険と厚生年金は、会社が同額を負担しています。つまり明細に書かれている金額は、実際にかかっている額の半分です。

退職すると、この折半がなくなります。国民健康保険に切り替えるか、それまでの健康保険を任意継続するかを選ぶことになりますが、どちらも全額が自分の負担です。年金も厚生年金から国民年金に変わり、2026年度の国民年金保険料は月17,920円と定額で決まっています。収入がゼロでも、この額は変わりません。

項目在職中退職後(収入ゼロの月)
健康保険給与天引き・会社と折半全額自己負担(国保または任意継続)
年金厚生年金・会社と折半国民年金 月17,920円(2026年度・定額)
住民税給与天引き(特別徴収)納付書で自分で納付(前年所得分が継続)
雇用保険料給与天引きなし
所得税給与天引き収入がなければ発生しない(還付の可能性あり)

※ 2026年9月時点の制度に基づく整理です。健康保険料は自治体・前職の標準報酬月額・年齢によって大きく変わります。

年収400万円クラスの単身者だと、健康保険が月2〜3万円、国民年金が月1.8万円、住民税の月割りが月1.5〜1.7万円。合計すると、生活費とは別に月5万円前後が固定で出ていく計算になります。6か月なら30万円。ここが「生活費×3か月」の計算から抜け落ちている部分です。

健康保険は選択によって金額が変わるので、退職前に両方を試算しておくのが確実です。任意継続と国民健康保険の比較と20日の申請期限は任意継続と国保はどっちが得かに、年金の切り替えと免除制度は退職後の年金の切り替えにまとめています。

もりそん
相談を受けていて多いのが、「失業保険があるから3か月くらいなら大丈夫だと思っていた」という声です。実際には、辞めてすぐの2か月がいちばん苦しい。収入はゼロなのに、社会保険と住民税の請求だけが先に届きます。この期間を乗り切れる金額を先に確保しておくと、転職先を条件で選べる余裕が残ります。
運営者・もりそん

失業手当が入るまでの時系列

ここが資金計画の要です。2025年4月1日以降に離職した人は、自己都合退職の給付制限が2か月から1か月に短縮されました。ただし「1か月で振り込まれる」という意味ではありません。実際の流れを並べます。

  1. 離職 → 離職票が届く(目安2週間前後)

    会社が資格喪失の手続きをし、ハローワークを経由して離職票が発行されます。ここが止まると、以降のすべてが止まります。届かないときの対処は離職票が届かないときの手順にまとめています。

  2. ハローワークで求職申込 → 待期7日

    求職の申込みをした日から数えて通算7日間は、離職理由にかかわらず支給されない期間です。この7日が明けてから、次の段階に進みます。

  3. 給付制限1か月(自己都合の場合)

    2025年4月1日以降の離職は原則1か月です。ただし5年以内に3回以上、自己都合で離職している場合は3か月となる扱いがあります。会社都合など特定受給資格者・特定理由離職者にあたる場合は、この期間自体がありません。

  4. 認定日 → 振込(5営業日程度)

    失業の認定を受けた日から、指定口座に振り込まれるまでおおむね5営業日。初回は給付制限が明けてから認定日までの日数分しか対象にならないため、満額ではなく10日前後の金額になることが多いのが実情です。

  5. 以降は4週間ごとの認定サイクル

    2回目以降は、4週間に1度の認定日ごとに28日分がまとまって振り込まれます。つまり入金は月1回・後払い。日々の支払いは貯金から先に出ていく形になります。

この流れを日数で足すと、離職から初回入金までおおむね2か月。給付制限が1か月に短縮されたことで以前より1か月ぶん軽くなりましたが、収入ゼロの期間が消えたわけではありません。詳しい日数の内訳は失業保険はいつからもらえるかで確認できます。

⚠ 「離職票待ち」で1か月ずれることがある

上の時系列は、離職票が2週間前後で届く前提です。会社の手続きが遅れると、その分だけすべてが後ろにずれます。ハローワークでの求職申込が終わるまで、待期も給付制限も始まりません。退職前に、離職票をいつ・どの住所に送ってもらうかを確認しておくと、この遅れを防げます。退職時に受け取る書類の一覧は退職時に返すもの・受け取るものに整理しました。

失業手当はいくら入るのか

基本手当の1日あたりの額(基本手当日額)は、離職前6か月の賃金合計 ÷ 180 = 賃金日額に給付率を掛けて計算します。給付率は賃金が低い人ほど高く設定され、おおむね5割から8割の範囲です(60歳以上65歳未満は別の率)。

ここで重要なのが上限額です。年齢区分ごとに上限が決まっていて、前職の給与がどれだけ高くても、この額を超えることはありません。上限・下限は毎年8月1日に見直され、2026年8月1日から次のように改定されています。

離職時の年齢基本手当日額の上限
(2026年8月1日〜)
28日分に換算すると
30歳未満7,450円約20.9万円
30歳以上45歳未満8,270円約23.2万円
45歳以上60歳未満9,110円約25.5万円
60歳以上65歳未満7,830円約21.9万円
下限(全年齢共通)2,562円約7.2万円

※ 厚生労働省が公表した2026年8月1日からの基本手当日額に基づきます。金額は毎年見直されるため、受給時点の額はハローワークでご確認ください。

この表が示しているのは、月給が高い人ほど、失業手当だけでは生活費をまかなえないということです。月給45万円の45歳が上限の9,110円で受給しても、28日分で約25.5万円。手取りベースでも大きく目減りします。「前の給料の6割くらいは入る」という感覚で計画を立てると、月数万円ずつずれていきます。

受け取れる日数(所定給付日数)は、離職理由・年齢・被保険者であった期間で決まります。自己都合で被保険者期間10年未満なら90日が目安です。90日は「3か月分」ですが、入金は4週間ごとなので、実際に受け取り終わるまでには4か月前後かかります。

退職後6か月のキャッシュフロー表

ここまでの要素を、月ごとに並べます。モデルは30代前半・単身・年収400万円・9月末に自己都合で退職・被保険者期間10年未満(所定給付日数90日)としました。数字はすべて2026年9月時点の制度に基づく試算です。

月の支出は次のように置きます。生活費(家賃・食費・光熱費・通信費など)15万円、健康保険2.5万円、国民年金1.8万円、住民税の月割り1.7万円。合計21万円です。住民税は実際には年4回の納付書でまとめて届きますが、資金計画では月割りで確保しておくほうが安全なので、ここでは均して扱います。

時期出ていくお金入ってくるお金その月の収支累計
10月
離職票待ち・求職申込
21万円0円−21万円−21万円
11月
待期+給付制限
21万円0円−21万円−42万円
12月
初回認定・初回入金
21万円約5万円
(10日分前後)
−16万円−58万円
1月
2回目の認定
21万円約15万円
(28日分)
−6万円−64万円
2月
3回目の認定
21万円約15万円−6万円−70万円
3月
所定給付日数の終了
21万円約13万円
(残日数分)
−8万円−78万円

※ 基本手当日額を5,300円前後(賃金日額約9,300円・給付率おおむね5〜6割)と仮定した概算です。実際の日額はハローワークが算定します。

この表から読み取れることが3つあります。

💡 キャッシュフロー表が教えてくれること
  • 最初の2か月で42万円が出ていく収入がまったくない期間に、支出だけが通常どおり発生します。ここを越えられるかが最初の関門です。
  • 初回入金は満額ではない給付制限が明けてから認定日までの日数分しか対象にならないため、10日分前後になるのが一般的です。「初回で1か月分入る」と思っていると足りません。
  • 6か月で約78万円の持ち出し失業手当を受け取ってもなお、月6〜8万円ずつ貯金が減り続けます。所定給付日数が終わる4か月目以降は、また収支が悪化します。

そしてこの表には、まだ入っていない支出があります。退職した年に働いた分の住民税が、翌年6月から1年かけて請求される分です。9月末退職なら9か月分働いているので、モデルでは15万円前後。この表の6か月が終わったあとに、別枠で来ます。仕組みは退職後の住民税で時系列にしています。

必要貯金額の計算式と3ケース

自分の数字を入れるための式は、これだけです。

✅ 必要貯金額の計算式

必要貯金額 =(月の生活費 + 健康保険 + 国民年金 + 住民税の月割り)× 空白が埋まるまでの月数 −(その間に受け取る失業手当)+ 予備費(生活費1か月分)

「空白が埋まるまでの月数」は、転職先が決まって初任給が入るまでの月数です。在職中に転職活動を始めていないなら、6か月で見ておくと現実的です。

この式に、3つの典型的な状況を入れてみます。いずれも自己都合退職・6か月で計算しています。

ケース月の支出6か月の支出受け取る手当必要貯金の目安
単身・賃貸
30代前半・年収400万円
21万円 126万円 約48万円 90〜100万円
実家暮らし
20代後半・年収350万円
13万円 78万円 約42万円 40〜50万円
扶養家族あり
40代・年収550万円・配偶者と子1人
32万円 192万円 約70万円 130〜150万円

※ 生活費・家賃・自治体の保険料率によって上下します。予備費として生活費1か月分を上乗せした金額です。

扶養家族がいるケースで金額が跳ね上がるのは、生活費が大きいことに加えて、家族分の国民健康保険料も自分が払うためです。任意継続を選べば扶養の考え方が引き継がれる場合があり、国保より有利になることがあります。ここは家族構成で答えが変わるので、必ず両方を試算してください。

逆に、必要額をいちばん確実に下げられるのは「空白が埋まるまでの月数」を短くすることです。在職中に転職活動を進め、次が決まってから辞めれば、この式の大部分が消えます。退職を伝えるタイミングの逆算と合わせて考えると、辞める時期そのものを設計できます。どうしても先に辞めることになる場合は、決まっていないまま辞めるときの期限の決め方で、締め切りを再就職手当の段差に置く方法を説明しています。

貯金が足りないときに使える制度

計算してみて足りなかった場合、まず検討するのは借入ではなく公的な制度と、退職日の調整です。効果が大きい順に並べます。

  1. 有給を消化して、在職期間を延ばす

    有給消化中は在職扱いなので、健康保険も厚生年金も会社との折半のままです。加えて給与も出ます。20日残っていれば、ほぼ1か月分の支出増を先送りできる計算になります。取得の進め方は有給消化しながら退職する方法にまとめました。

  2. 国民年金の保険料免除・納付猶予を申請する

    退職を理由とする特例があり、前年所得ではなく退職の事実で審査してもらえる仕組みがあります。申請しなければ適用されません。免除された期間も年金の受給資格期間には算入されるなど、未納とは扱いが異なります。要件と手続きは退職後の年金の切り替えで確認してください。

  3. 健康保険を任意継続と国保で比較する

    任意継続は退職日の翌日から20日以内の申請が必要で、この期限を過ぎると選べません。2026年度の協会けんぽでは、任意継続の保険料計算に使う標準報酬月額の上限が32万円とされています。給与が高かった人ほど、任意継続のほうが安くなる可能性があります。判断材料は任意継続と国保の比較に。

  4. 住民税の減免・徴収猶予を市区町村に相談する

    失業を理由とした減免や、分割・猶予の制度を設けている自治体があります。要件も割合も自治体ごとに異なり、全国一律ではありません。納付書が届いてから放置すると延滞金が付くので、払えないと分かった時点で窓口に相談するのが原則です。

  5. 体調を崩している場合は、傷病手当金の要件を確認する

    働けない状態が続いているなら、退職前に傷病手当金の要件を満たせるかどうかで受け取れる金額が大きく変わります。医学的な判断は主治医に委ねる必要があり、自己判断で退職日を決める前に相談してください。制度の条件は傷病手当金の受け取り方に整理しています。

この5つは、どれも自分で申請しないと動かないという共通点があります。退職の手続きは自動で進む部分と申請が必要な部分が混ざっているので、順番と期限をまとめて確認しておくと取りこぼしが減ります(退職後の手続きと順番)。

会社都合なら必要額はどう変わるか

同じ退職でも、離職理由の判定によって必要な貯金は変わります。特定受給資格者(倒産・解雇など)や特定理由離職者(期間満了、正当な理由のある自己都合など)にあたる場合、次の3点が変わります。

項目自己都合会社都合・特定理由離職者
給付制限原則1か月
(2025年4月1日以降の離職)
なし(待期7日の満了後から対象)
初回入金の目安離職から約2か月離職から約1か月
所定給付日数90〜150日年齢と被保険者期間により90〜330日
国民健康保険料通常の算定対象者向けの軽減の仕組みがある

※ 所定給付日数は年齢層と被保険者であった期間の組み合わせで細かく分かれます。正確な日数はハローワークにご確認ください。

キャッシュフロー表に当てはめると、給付制限がないだけで収支の底が1か月ぶん浅くなり、必要貯金額は20万円前後軽くなります。所定給付日数が長くなればさらに差がつきます。

注意したいのは、離職理由の判定は離職票の記載をもとに行われるということです。自分では会社都合だと思っていても、離職票に自己都合と書かれていれば、その前提で手続きが進みます。記載に納得できない場合はハローワークに申し出る手続きがあり、判断は最終的にハローワークが行います。どのようなケースが該当しうるかは会社都合退職にできるケースで整理しています。

よくある準備の失敗

⚠ 貯金の準備で起きがちなこと
  • 退職金を当てにして計算する:支給の有無も金額も、勤続年数と就業規則で決まります。支給時期も退職から1〜2か月後になることがあり、いちばん苦しい時期に間に合わないことがあります。就業規則の退職金規程を先に確認してください。時期の決まり方と、申告書の出し忘れで手取りが減る仕組みは退職金はいつ・いくら振り込まれるかにまとめています。
  • 最後の給与が満額出る前提で計画する:1〜4月に退職する場合、住民税が5月分まで一括徴収され、最後の給与の手取りが大きく減ることがあります。社会保険料の控除タイミングによっても変わります。
  • 翌年6月の住民税を見込んでいない:退職した年に働いた分の請求が、収入のない状態で1年かけて届きます。6か月分の資金計画とは別枠で確保しておく必要があります。
  • クレジットカードの審査を退職後に回す:収入がない状態では審査に影響します。必要なカードや住宅ローンの手続きは、在職中に済ませておくほうが確実です。年収0円で申し込むと何が起きるか、済ませておく順番は退職後にクレジットカード・ローンの審査は通る?で解説しています。
  • 貯金を使い切ってから動き出す:残高が減るほど、転職先を条件で選ぶ余裕がなくなります。「残り1か月分になったら妥協する」ではなく、「残り3か月分になったら基準を見直す」と決めておくほうが結果的に納得できる選択ができます。

もうひとつ、退職日そのものが決まらずに空白が延びるケースがあります。引き止めが続いて退職日が固まらない、有給を消化させてもらえない、といった状況です。退職日が1か月遅れれば、その分の社会保険料は会社と折半のままなので、必ずしも損とは限りません。ただし、辞める意思が固まっているのに話が進まないなら、交渉の窓口を変えるほうが早く片付きます。

労働組合が実施する退職代行であれば、退職日の調整や有給消化の交渉まで会社とのやり取りを代わって行えます(民間業者は交渉ができず、弁護士は交渉と法的請求まで対応できます。この線引きは労働組合と弁護士の違いで解説しています)。

よくある質問

退職前の貯金は生活費の何か月分あればよいですか?
「生活費の3か月分」という目安が広く使われていますが、退職後は健康保険料・国民年金保険料・住民税が新たに自己負担として乗るため、生活費だけで計算すると不足しやすくなります。単身で家賃を払っている場合、月の生活費が15万円なら90〜100万円程度が目安です。実家暮らしなら40〜50万円、扶養家族がいる場合は130〜150万円程度まで幅があります。金額は家賃・自治体・前職の給与で変わるため、必ず自分の数字で計算してください。
失業保険の給付制限が1か月になったので、貯金は少なくて済みますか?
以前より1か月分は軽くなりますが、収入ゼロの期間がなくなるわけではありません。2025年4月1日以降の離職では自己都合の給付制限が原則1か月に短縮されましたが、離職票が届くまでに2週間前後、待期が7日、そこから給付制限1か月、さらに認定日を経て振込までに5営業日程度かかります。合計すると、離職から初回入金まで約2か月というのが2026年9月時点の一般的な流れです。なお5年以内に3回以上自己都合で離職している場合は給付制限が3か月になる扱いがあります。
失業手当は前の給料の何割くらいもらえますか?
基本手当日額は、離職前6か月の賃金合計を180で割った賃金日額に給付率を掛けて計算します。給付率は賃金が低い人ほど高く設定され、おおむね5割から8割の範囲です(60歳以上65歳未満は別の率)。さらに年齢区分ごとに上限があり、2026年8月1日からは30歳未満7,450円、30歳以上45歳未満8,270円、45歳以上60歳未満9,110円、60歳以上65歳未満7,830円、下限は全年齢2,562円です。前職の給与が高いほど、給与に対する割合は小さくなる仕組みです。
貯金が足りない状態で辞めるとどうなりますか?
生活費が尽きると、転職先を条件で選ぶ余裕がなくなり、結果として次の職場でも同じ悩みを抱えやすくなります。先に検討したいのは、有給を消化して在職期間を延ばす、国民年金の保険料免除・納付猶予を申請する、国民健康保険の軽減制度や任意継続と比べる、住民税の減免・徴収猶予を市区町村に相談する、といった公的な手段です。これらは申請が前提で、自動では適用されません。体調を崩している場合は、退職の前に傷病手当金の要件を満たせるかを確認する順番もあります。
会社都合で辞める場合は必要な貯金が変わりますか?
変わります。特定受給資格者や特定理由離職者にあたる場合は給付制限がないため、待期7日の満了後から支給対象となり、初回入金がおおむね1か月早くなります。所定給付日数も年齢と被保険者期間によっては自己都合より長くなります。さらに国民健康保険料についても、対象者向けの軽減の仕組みがあります。離職理由の判定は離職票の記載に基づき、最終的にはハローワークが判断するため、記載内容は必ず確認してください。
住民税はいつまで払い続けることになりますか?
住民税は前年の所得に対して課税され、その年の6月から翌年5月にかけて納めます。退職して収入がなくなっても、前年に働いていた分の請求は続きます。退職した年に働いた分についても、翌年6月から1年かけて請求が届きます。つまり退職の翌年6月に、収入がない状態でもう一度まとまった請求が来る形です。これを見込まずに貯金を使い切ると、そこで資金が足りなくなります。
転職先が決まってから辞めれば貯金は要りませんか?
必要額は大きく下がりますが、ゼロにはなりません。退職日と入社日の間が空けば、その期間の健康保険と年金は自分で手続きして払うことになります。また入社直後の給与は締め日の関係で満額にならないことが多く、最初の1〜2か月は手取りが薄くなりがちです。転職先が決まっている場合でも、生活費1〜2か月分は手元に残しておくほうが安全です。

まとめ:金額ではなく「月ごとの並び」で見る

貯金額の不安は、総額で考えているうちは消えません。月ごとに「出ていくお金」と「入ってくるお金」を並べると、どの月がいちばん苦しいのか、そこを越えるにはいくら要るのかがはっきりします。数字が出れば、辞める時期を動かすのか、有給を使うのか、次を決めてから辞めるのか、選べるようになります。退職日から逆算した段取りは逆算カレンダーで組み立てられます。

📚 参考情報・データの出典
  • 厚生労働省「雇用保険の基本手当日額の変更」(2026年8月1日からの上限額・下限額。2026年9月確認)
  • 厚生労働省・ハローワークインターネットサービス「基本手当について」(賃金日額・給付率・所定給付日数・待期・給付制限。2026年9月確認)
  • 雇用保険法の改正による自己都合離職者の給付制限見直し(2025年4月1日以降の離職について原則1か月。5年以内に3回以上の自己都合離職は3か月)
  • 日本年金機構(2026年度の国民年金保険料 月額17,920円、退職(失業)による保険料免除・納付猶予の特例。2026年9月確認)
  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)「健康保険任意継続制度」(令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限32万円、申請期限は退職日の翌日から20日以内。2026年9月確認)
  • 各市区町村が公表する個人住民税および国民健康保険料の案内(前年所得課税、失業等による減免・軽減の要件は自治体により異なります。2026年9月確認)
  • 本文中の金額は年収400万円・単身などのモデルを用いた2026年9月時点の目安です。実際の保険料・税額・給付額は、所得・家族構成・自治体・年齢によって異なります。個別の判定はハローワーク、市区町村の窓口、年金事務所にご確認ください。