日本年金機構の案内では、健康保険の被扶養者を判定する「年間収入」には雇用保険の失業等給付も含まれると明記されています。基準は原則として年間収入130万円未満。これを1日あたりに直すと130万円÷360日=約3,611円なので、基本手当日額が3,612円以上だと、受給している間は家族の扶養に入れません。

ただし「失業保険をもらうなら扶養は無理」という話ではありません。扶養から外れるのは受給が始まった日から終わるまでで、その前後は扶養に入れます。そして税金の扶養(配偶者控除など)のほうは、失業保険が非課税のため判定にそもそも入りません。この記事では、外れる日と戻る日を具体的な日付で追い、外れている間にいくらかかるかまで計算します。

先に結論

健康保険の扶養は、基本手当日額が3,612円以上(60歳以上は5,000円以上、配偶者以外の19〜22歳は4,167円以上)なら受給中は入れません。目安として、35歳前後なら離職前の月給(賞与を除く額面)がおよそ13.5万円を超えると3,612円に届きます。

ただし扶養から外れるのは受給開始日(給付制限や待期が終わった翌日。振込日ではない)から受給終了までだけで、退職直後〜給付制限中と受給終了後は扶養に入れます。外れている間は国民健康保険と国民年金(2026年度 月17,920円)に入る必要がありますが、90日分の失業保険と比べると受給したほうが手元に残るケースがほとんどです。税金の扶養は失業保険が非課税なので影響しません。

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3,612円の壁はどこから来るのか(年齢別の基準)

健康保険の被扶養者になれるかは、「これから1年間の収入の見込み」で判定します。過去1年の年収ではありません。そのため、退職して給与がなくなった人でも、これから失業保険を受け取るなら「日額×360日」で年収が見込まれる、という考え方になります。

扶養に入る人年間収入の基準受給中に扶養に入れない日額
60歳未満(原則) 130万円未満 3,612円以上
19歳以上23歳未満(配偶者を除く) 150万円未満(2025年10月1日以降の認定) 4,167円以上
60歳以上、または一定の障害がある人 180万円未満 5,000円以上

※ 19〜22歳の区分は、扶養認定日が属する年の12月31日時点の年齢で判定します(日本年金機構)。夫や妻として扶養に入る場合は、年齢に関係なく130万円(60歳以上は180万円)の基準です。同居の場合は「扶養する人の年収の2分の1未満」という条件もあります。

130万円÷360日=3,611.1円なので、3,611円までなら年収換算で130万円未満、3,612円で130万円を超えます。150万円÷360日=4,166.6円、180万円÷360日=5,000円も同じ理屈です。

⚠ 2026年4月の「労働契約で判定」ルールは、失業保険には使えない

2026年4月1日から、給与収入だけの人は労働条件通知書などの契約内容で年間収入を判定する取り扱いが始まりました。ただし日本年金機構の案内では、この方法は給与収入のみの場合に限り、雇用保険の失業給付や年金など給与以外の収入があると使えないとされています。受給中は従来どおり日額で判定される、と考えてください。

なお、これは協会けんぽや日本年金機構が示す基準です。扶養に入れてもらう家族が健康保険組合や共済組合に加入している場合、基準の考え方は同じでも、必要書類や判定の運用が組合ごとに異なることがあります。家族の勤務先の健康保険の案内を確認してください。

月給いくらで壁を超えるか(早見表)

自分の日額は、離職前6か月の賃金(残業代や手当は含み、賞与は含まない)を180で割った「賃金日額」に、50〜80%の給付率を掛けて決まります。給与が低いほど給付率が高くなる仕組みなので、月給と日額は比例しません。令和8年8月1日改定の上限・下限をもとに、当サイトの失業保険の早見表と同じ式で計算した目安が次の表です。

離職前の月給(額面・6か月平均)基本手当日額の目安(30〜44歳)受給中の扶養(60歳未満・130万円基準)
10万円2,666円入れる
12万円3,200円入れる
13万円3,466円入れる
13.5万円3,600円入れる(ぎりぎり)
14万円3,733円入れない
15万円4,000円入れない
18万円4,683円入れない
20万円5,037円入れない

※ 2026年9月時点の目安。賃金日額=月給×6÷180で計算し、1円未満は切り捨て。実際の日額はハローワークが交付する雇用保険受給資格者証に記載される額で判定されます。

この表から読み取れる分かれ目は、おおむね次のとおりです。

フルタイムの正社員として働いていた人は、ほとんどが3,612円を超えます。扶養に入ったまま受給できるのは、パートや短時間勤務で雇用保険に入っていた人が中心、というのが実態に近い整理です。

扶養から外れる日・戻る日を日付で追う

いちばん誤解が多いのがここです。扶養から外れるのは「失業保険の申し込みをした日」でも「最初の振込日」でもなく、基本手当の支給対象になる最初の日(受給開始日)です。健康保険組合のFAQでも、給付制限がある場合はその終了の翌日、ない場合は待期満了の翌日が資格を失う日で、振込日ではないと説明されています。

自己都合で退職し、給付制限が1か月の人を例にとります(2025年4月以降、自己都合の給付制限は原則1か月。5年以内に3回目以降の自己都合離職などは3か月)。

日付(例)できごと健康保険年金
2026年10月31日 退職日 会社の保険は翌日に資格喪失 第2号(厚生年金)の最終月
11月1日〜 無収入の期間 家族の扶養に入れる 配偶者なら第3号
11月9日 ハローワークで受給資格決定。ここから7日間が待期 扶養のまま 第3号のまま
11月16日〜12月15日 給付制限(1か月) 扶養のまま 第3号のまま
12月16日 受給開始日(日額3,612円以上の場合) 扶養から外れる → 国民健康保険へ 第1号(国民年金)へ
2027年3月15日ごろ 所定給付日数90日の最終日(認定日のずれで前後する) 受給終了の翌日から扶養に戻れる 第3号に戻る

この例で扶養から外れるのは、12月16日から翌年3月15日ごろまでの約3か月です。会社都合などで給付制限がない人は、待期が終わった翌日(この例なら11月16日)から外れます。

✅ 「扶養に入れる期間」は3つに分かれる
  • 退職日の翌日〜待期・給付制限の終わり:入れる(収入がないため)
  • 受給開始日〜受給終了日:日額が基準以上なら入れない
  • 受給終了の翌日以降:再び入れる(次の仕事の収入見込みしだい)

病気・妊娠・出産・育児などですぐに働けず受給期間を延長している間は、基本手当を受け取っていないので扶養に入れる扱いが一般的です。延長を解除して受給を始めた時点で、上の表の「受給開始日」と同じ判定になります。

もりそん
この質問をもらうと、まず「失業保険の日額はいくらですか」と聞き返すようにしています。3,612円に届いていなければ悩む必要がありませんし、届いていれば悩むべきは「外れるかどうか」ではなく「外れる3か月の保険料をどう用意するか」だからです。
運営者・もりそん

外れている間にかかるお金と、受給したほうが得かの計算

扶養から外れている間は、自分で国民健康保険と国民年金(第1号被保険者)に入る必要があります。国民年金の保険料は2026年度(令和8年度)が月額17,920円。国民健康保険料は前年の所得と自治体で決まるため一律には言えませんが、住んでいる市区町村の窓口やサイトで試算できます。

上の例(12月16日〜3月15日ごろに外れる)で、保険料がかかる月を数えます。国民年金は月末時点の加入区分で決まるので、12月・1月・2月の3か月が第1号、3月は月末に第3号へ戻っているので対象外です。国民健康保険も、資格を得た月(12月)から失った日の前月(2月)までの3か月分が目安になります。

項目(離職前の月給14万円・所定90日の例)金額の目安
失業保険の総額(日額3,733円×90日)335,970円
国民年金(17,920円×3か月)−53,760円
国民健康保険(3か月分)自治体と前年所得で変わる(下の注)
差し引き国保が月数万円に達しない限り、受給したほうが手元に残る

※ 2026年9月時点の制度に基づく目安。国民健康保険は、前年の給与所得が高かった人ほど保険料が上がります。会社都合などの非自発的な離職なら、前年の給与所得を100分の30として計算する軽減制度が使える場合があります。

「扶養から外れるくらいなら失業保険をもらわない」という選択も理屈の上ではありえますが、金額で比べると割に合わないことがほとんどです。日額が3,612円ちょうどでも90日で約32.5万円になり、外れる期間の国民年金は約5.4万円。国保の保険料がよほど高くない限り、受給して保険料を払ったほうが差し引きでは多く残ります。

国民年金の保険料がすぐに払えない場合は、退職(失業)を理由とする保険料免除・納付猶予の特例を市区町村の窓口で申請できます。免除された期間は将来の年金額に反映される割合が下がるので、余裕ができたら10年以内の追納も検討してください。切り替えの手順は退職後の年金の切り替え、保険の選び方は任意継続と国民健康保険の比較にまとめています。

税金の扶養は別の話。失業保険は数えない

「扶養」という言葉には、健康保険・年金の扶養と、所得税・住民税の扶養(配偶者控除・扶養控除)の2種類があります。失業保険との関係はまったく逆です。

比べる点社会保険の扶養(健康保険・第3号)税金の扶養(配偶者控除など)
失業保険の扱い 収入に含める 含めない(非課税)
判定の期間 これから1年間の見込み その年の1月1日〜12月31日の実績
基準 年130万円未満(日額3,612円未満)など 2026年分は合計所得62万円以下(給与だけなら給与収入136万円以下)
判定する人 家族の勤務先の健康保険(協会けんぽ・健保組合) 家族の勤務先の年末調整、または確定申告

雇用保険法では、失業等給付として受け取ったお金に税金その他の公課を課すことはできないと定められています。そのため、配偶者控除などを判定するときに数えるのは退職するまでにその年に受け取った給与だけです。たとえば6月に辞めて1〜6月の給与が100万円なら、その後に失業保険を30万円受け取っても、税金の判定上の収入は100万円のままです。

逆に、年の途中まで働いていた給与が多い人は、失業保険に関係なく税金の扶養に入れないことがあります。「健康保険の扶養には入れたのに、配偶者控除は受けられなかった」というずれは、この判定期間の違いから起きます。年の途中で辞めた人の税金は退職後の確定申告で詳しく扱っています。

手続きの順番と添付書類

扶養の出入りの手続きは、扶養に入れてもらう家族(被保険者)の勤務先を通じて行います。日本年金機構の案内では、健康保険の「被扶養者(異動)届」は国民年金の第3号被保険者の届出と一体の様式で、事実が発生してから5日以内の提出が求められています。

  1. 1. 退職したら:扶養に入る届出

    家族の勤務先に被扶養者(異動)届を出してもらいます。退職の事実を示す離職票の写しまたは退職証明書を添付するのが一般的です。会社の健康保険証(資格確認書)は退職日までに返します。

  2. 2. 受給資格が決まったら:日額を勤務先に伝える

    ハローワークで交付される雇用保険受給資格者証(または受給資格通知)の写しを求められることがあります。日額が基準未満なら、受給中もそのまま扶養にいられます。

  3. 3. 受給が始まったら:扶養を外れる届出と、国保・国民年金への加入

    日額が基準以上なら、受給開始日で扶養を外れる届出をします。同時に、住んでいる市区町村で国民健康保険と国民年金(第1号)の加入手続きを行います。国民年金の種別変更は14日以内が目安です。

  4. 4. 受給が終わったら:再び扶養に入る届出

    支給終了が記載された受給資格者証の写しなどを添えて、もう一度被扶養者(異動)届を出してもらいます。扶養に戻ったら、市区町村で国民健康保険の脱退手続きも忘れずに行います(やらないと保険料の請求が続きます)。

退職直後にやる手続き全体の順番は退職後の手続き完全ガイドで、期限つきの一覧にしています。

見落としやすい5つの注意点

1. 外れる届出を忘れると、医療費の返還を求められることがある

受給中なのに扶養のまま病院にかかると、後から資格がさかのぼって取り消され、健康保険が負担した分(医療費の7割など)の返還を求められることがあります。健康保険組合のFAQでも、資格喪失後の受診分について医療費の返還請求の可能性が明記されています。

2. 日額は「受給資格者証の数字」で判定される

自分で計算した目安ではなく、ハローワークが決めた基本手当日額で判定されます。早見表で3,600円前後になる人は、受給資格決定の日に受給資格者証の数字を確認してください。

3. 給付制限中に就職が決まったら、扶養に入ったまま終わることもある

給付制限中に再就職すれば、基本手当は支給されないまま終わります(条件を満たせば再就職手当が出ます)。その場合、扶養から外れる期間は発生せず、次の勤務先の保険に移るだけです。再就職手当のような一時金の扱いは保険者で考え方が異なることがあるので、受け取る前に家族の勤務先へ確認しておくと安心です。

4. 傷病手当金を退職後も受け取っている場合も同じ考え方

年間収入には健康保険の傷病手当金も含まれます。退職後に傷病手当金を継続して受け取っている間は、その日額で同じように判定されます。

5. 家族に知られずに扶養に入ることはできない

扶養の手続きは家族の勤務先を通すので、家族が関与しないと完了しません。退職を家族にまだ話していない人は、先に伝え方を考えておく必要があります(退職が親に伝わる経路で整理しています)。

よくある質問

失業保険をもらいながら夫(妻)の扶養に入れますか?
基本手当日額が3,611円以下(60歳以上は4,999円以下)なら、受給中も扶養に入れます。3,612円以上の場合は、受給開始日から受給終了までの間は扶養に入れず、国民健康保険と国民年金に加入します。退職直後から待期・給付制限が終わるまでと、受給終了後は扶養に入れます。
扶養から外れるのは、失業保険の振込日からですか?
振込日ではありません。基本手当の支給対象になる最初の日(給付制限がある人はその終了の翌日、ない人は待期満了の翌日)が基準です。振込は4週間ごとの認定のあとなので、振込日で考えると届出が遅れます。
3,612円はどうやって決まっている数字ですか?
被扶養者の収入基準である年間130万円未満を360日で割った額(約3,611円)です。日額3,612円以上だと年収換算で130万円以上になるため、受給中は扶養に入れないという扱いになります。60歳以上の180万円なら5,000円、配偶者以外の19〜22歳の150万円なら4,167円が同じ考え方の基準です。
失業保険をもらうと、配偶者控除が受けられなくなりますか?
失業保険は非課税なので、配偶者控除や扶養控除の判定には含めません。判定に使うのは、その年に受け取った給与などの所得です。2026年分の配偶者控除は、配偶者の合計所得金額が62万円以下(給与だけなら給与収入136万円以下)が条件です。
扶養から外れたくないので、失業保険をもらわないほうが得ですか?
多くの場合、受給したほうが手元に残ります。たとえば日額3,733円・90日なら総額約33.6万円で、外れる約3か月の国民年金は約5.4万円です。国民健康保険料は自治体と前年所得で変わるので、市区町村のサイトで試算して比べてください。
受給期間を延長している間は扶養に入れますか?
延長中は基本手当を受け取っていないため、扶養に入れる扱いが一般的です。延長を解除して受給を始めると、その時点で日額による判定になります。扱いは保険者によって異なることがあるので、家族の勤務先の健康保険に確認してください。

まとめ:見るべきは「日額」と「受給開始日」

まずはマネカルのシミュレーターか受給資格者証で自分の日額を確かめてください。3,612円を超えているなら、外れる期間の保険料を先に準備しておけば、あとは受給期間を次の仕事探しに使うだけです。

📚 参考情報・データの出典

※ 本記事の金額・基準は2026年9月時点の公的機関の公表情報に基づく目安です。健康保険組合・共済組合によって運用や必要書類が異なる場合があります。個別の判定は、扶養に入れてもらう家族の勤務先の健康保険にご確認ください。